新着情報
2024.07.12
関東信越税理士会 新潟支部では、支部ホームページを通じ、一人でも多くの方に税理士という職業に興味を持っていただき、魅力を知っていただくために、新潟支部で活躍している会員のインタビューを掲載しています。
なぜ税理士になったのか?
税理士として、どんな働き方をしている?
税理士の仕事のどこが好き?
税理士の仕事を続けていくためには、どんなことを大事にしている?
そんな質問をぶつけつつ、税理士という職業の魅力について、色々語ってもらうという企画を、複数回に渡ってお届けしています。多様性の大事さが叫ばれる今、こちらのインタビューも、年齢や性別・働き方など、なるべく幅広いところから話を聞いていきたいと思っています。
第5回目は、国税OBとしてのキャリアを生かし、新潟市内の税理士事務所で社員税理士として活躍中の、S会員です!
――税理士になった経緯を教えてください。もし差し支えなければ、前職ではどんな部門で従事されていたのかも。
私は国税OBですが、退職後の第二の人生は国税での経験を活かして税理士の仕事ができればと思っていました。国税職員は、所定の研修履修者又は試験合格者で一定年数を勤務すると試験免除で税理士資格を取得することができることから、私も退職前には資格を取得していました。この税理士資格を在職中に取得できるということも国税の職場に入った動機の一つですが、学生時代アルバイトに明け暮れたことから案の定、成績が自慢できるものではなかったため民間企業への就職活動は諦め、一発勝負の公務員採用試験一本で臨みました。その中の一つが国税専門官採用試験でしたが、何とか合格することができた採用試験の中で、東京で仕事ができ、将来的に税理士資格も取得できるということで国税の職場を選びました。とはいっても、実家が農家でしたので税金には縁遠かったほか、大学も法学部のためで算盤を弾いたこともなく、簿記も全く素人でのスタートでした。
国税の職場は最初、東京国税でしたが、今でもよく覚えているのは、採用面接で面接官の質問の一つに「上司から違法と思われる職務命令を受けたらどうしますか?」の質問があったことです。想定外の質問で頭が白くなりかけましたが、「違法ではないかとの意見は述べますが、それでも命令されれば従います。」と何とか答えました。この答えが良かったのかどうかは分かりませんが、採用されたことからすると及第点の答えだったということでしょうか。
その後に関信国税に戻りましたが、国税には定年まで通算37年勤務しました。その間、ほぼ法人畑(国税では従事する事務系統のことを「畑」と呼んでいました。)で仕事をしました。国税は基本的に、「法人税部門」とか「所得税部門」とか「資産税部門」とか、一度その事務系統に配属されると、定年までその系統で仕事に従事する職員がほとんどです。
私も最初に希望の事務系統を出したわけですが、何となく大学での専攻を活かせるのは法人か徴収と思って希望欄に書きました。特に法人は、将来税理士になったときに一番役立つのかなと思ったほか、大企業に対する調査など颯爽として仕事に携わる自分の姿を想像して一番目に書きました。
幸か不幸かは分かりませんが、最初の税務署への配属辞令は法人でした。2年目から調査に従事しましたが、最初の頃は中々結果が出ず、先輩から叱咤激励を受ける毎日でしたが、それでも様々な経験を積む中で調査の面白さを覚え、やり甲斐を持てるようになりました。その後、国税局調査課で資本金1億円以上の大企業の調査も数多く経験させてもらうことが出来ました。
その経験は今にも活きていると思います。国税局の調査課勤務となった当初、出張先で宿に帰ってからその日の反省会をやるのが恒例になっていましたが、その席で、先輩から「通達を最初から最後まで読んだことがあるのか、読んでおかないと仕事にならないよ。」と指導されました。署にいた頃は、売上や棚卸の漏れはないか、おかしな経費はないかといったところにしか目が向かなかったので、通達を紐解く機会はほとんどありませんでしたし、恥ずかしながらそこまで意識したことがありませんでした。しかし国税局の調査となると相手は大企業ですので、単純な期ずれもありません。会社の経理担当者も局の税務調査を何度も経験していて、税務知識も経験の浅い私よりはるかに詳しかったりするため、税法解釈の部分をしっかり理解していないと仕事になりません。自分なりの専門分野を作り、相手に負けないスキルを身に付けなければならいと痛感しました。
あとは、税務調査で何か問題点を指摘する際の国税の考え方、税法の基本的な考え方を学んだことが今の仕事に活きていると思います。結局、税法の適用に当たって一番大事なことは、その立法趣旨であり、経済的合理性や一般常識に照らしてどうなのかという視点が大事なことを学びました。先ほどお話したように、自分はほぼ法人畑でしたので、所得税や資産税についてはそれほど詳しくはありませんが、会社の代表者と話す際は法人税だけでなく、特に資産税の知識がないと信頼を得ることはできません。むしろ代表者は、法人税よりも事業承継に向けた株式対策の方により関心を持たれている場合が多いと思います。
私も税理士になってから、資産税の勉強は続けていますが、会社代表者との話の中で、質問には極力その場で答えるようにしています。もちろん、事務所に帰ってからその答えた内容に間違いがないか確認するわけですが、補足説明することはあっても、答えた内容に間違いがあり、後で訂正を要することはほとんどありません。それは、税法の立法趣旨、通達の制定趣旨と併せて、経済的合理性や一般常識に基づいているからだと思っています。
この考え方は、税務調査の立会においても同様であり、調査最終日に税務署担当者から色々な指摘事項の説明を受ける訳ですが、それに対してこちらの主張をする際に、基本的な考え方としてこの視点を踏まえた主張であれば、税務署の方にもご納得いただけることが多いのではと思います。
――現在はどんなかたちで働かれていますか?独立を考えられたことは?
今は社員税理士として働いています。定年退職後、最初の1年半ほど個人事務所をやっていました。他の税理士事務所を引き継いだわけでもなかったので顧問先もそれ程多くなく、比較的時間に余裕がありました。最初はゆっくり過ごせていいなと思っていましたが、半年も経たないうちに苦痛に感じるようになっていました。そんな頃、知人を通じて今の税理士法人で社員税理士として働かないかと声を掛けていただき、お世話になることにしました。
勤務はフルタイムで仕事をしています。定時は一応5時半ですが、大体7時前後で帰っています。ただ、休日出勤はほとんどないので割と安定した働き方ができていると思っています。しばらくのんびりしていた時期があったので、毎日の通勤は最初の1週間程は大変でしたが、体もすぐに慣れました。今では生活にメリハリ出来て良かったと思っています。
――税理士の仕事の中で、好きな仕事とか、やっていて楽しい仕事はありますか?
会社では、現在の事務所を預かっていることから申告書チェックや個別問題への対応はありますが、それとは別に組織再編や事業承継事案に関わらせてもらっていて、数人のメンバーと一緒に、一からスキームを考えたり、税務リスクを検討したりするのは大変な反面、税法だけでなくより広い視点での仕事ですのでとても面白く、やり甲斐があります。
――逆に大変なこと、苦労していることはありますか?
申告書の作り方ですね。国税時代は、できた申告書をチェックする立場でしたが、今は一から申告書を作るのが仕事です。国税時代は手書きで修正原案を作ることはあっても、事務所で使用している会計ソフトを使った修正申告書の作成をした経験がないので、操作方法で苦労しています。また、税理士事務所も働き方改革が求められていますが、そのためには業務の効率化が前提となることは分かっていても、記帳から、決算、申告書作成の一連の実務経験がなく、年齢的にアナログ世代でシステムに疎いことから、事務所内の業務効率化をどう進めていったらいいのか右往左往しているのが実情です。
――趣味やハマっているもの、お好きなものなどあったら教えてください。
趣味は仕事です!と言いたいところですが……趣味と言える趣味もなく、あえて言えば、家庭菜園と、ジョギング、山歩きでしょうか。山歩きは思い立ったときに秋葉丘陵の菩提樹山や五頭山に登る程度、ジョギングは週末に5キロ程走っていますが、今年もシティマラソンの10キロ完走が目標です。家庭菜園は、スタンダードな夏野菜と冬野菜です。夏なら胡瓜と茄子、トマト、甘唐辛子。冬だと、大根、春菊、冬菜あたりです。趣味をやっているときは、仕事のことを完全に忘れています。普段ほとんど身体を動かさないデスクワークですから、こうして汗をかいて自然と関わることで疲れも癒えますし、ストレス発散にもなっていると思います。
――最後に、税理士という仕事に興味があるという方に向けて、メッセージをお願いします。
税理士は、会社の経営者と関わる仕事です。いろいろな業種の社長さんから、その業界のことをはじめとして様々なお話が聞けます。国税時代も、調査の初日に、先ず「概況聴取」といってその会社の概要とか業界の話を社長さんから色々聞かせてもらいます。この概況聴取でお聞きする話はとても勉強になりましたが、税理士の場合は社長さんと信頼関係がありますから、社長さんはもっと本音ベースでより内容の濃い話をしてくれます。世の中にはたくさんの職業がありますが、社会で生きていくにはやはり知識や経験があると強いです。
不確実性が増している今の世の中で、様々な業界の知識や人脈を持っているということはすごい財産になるし、武器になると思います。また、そこが税理士という仕事の魅力だと思います。是非、税理士を目指してください。